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トリスタン和音 [国内クラシックコンサートレビュー]

新国立劇場、新国オペラを観に来たのはいつ以来だろう?ちょっと思い出せないくらい大昔だ。たぶんコロナ前。過去日記を調べる気もしないくらい大昔だ。演目も思い出せない。
                             
オペラは、自分がよく知っている演目だとすんなり行く気になるけど、予習が必要な自分にとって新しい演目はなかなかハードルが高い。ふだん忙しいので。オペラはやっぱり観劇するのにすごいエネルギーがいると思う。
               
新国オペラで、ワーグナーのトリスタンとイゾルデを13年ぶりに上演するという。演出も13年前のプロダクションのものだそうだ。
               
これは行かないとな~。
                              
新国立劇場、ほんとうにご無沙汰しているので、ひさしぶりに行ってみたいとずっと心に引っかかっていた。でもなかなかオペラを観に行く勇気と時間がなく悩んでいたところに、トリスタンとイゾルデを上演するという。
                      
これは行かないといかんだろう!
                                  
自分にとって、ワーグナーのトリスタンとイゾルデは、自分のワグネリアン人生の頂点に立つ楽劇だ。
                                
2016年は、まさにトリスタンとイゾルデ・イヤーだったと言っていい。
                              
ワーグナーの聖地、バイロイト祝祭劇場で初めてバイロイト音楽祭を体験。
その頂点がトリスタンとイゾルデだった。
                           
そして日本に帰国してからも東京二期会でトリスタンとイゾルデ。東京文化会館。
                                  
そしてMETライブビューイングでもトリスタンとイゾルデ。
                                                               
昔から不思議に思っていたのだけど、オペラ界ってどうして同じ演目を一時期に集中的に続けたくなる性格なのでしょう?(笑)今年はずっとトリスタンとイゾルデばっかり、というのがすごい多いです。
                        
バイロイト音楽祭のときは、ティーレマン指揮で、タイトルロールがステファン・グールドとペトラ・ランク。東京二期会のときは、池田香織さんと山下牧子さんとか。
                        
METは念願のニーナ・ステンメ様。イゾルデ役100回というイゾルデを歌わせればこの人の右に出る人はいないというステンメ様のイゾルデを堪能。
                     
凄かった~~~。映画スクリーンなのに、もうすごいヴィブラート利かせまくりのまさにワーグナー歌手の典型のような巨艦ぶりで、すごい歌い手さんだと思いました。ステンメ様のイゾルデを生涯で1回実演で体験してみたいです。夢です。
                               
そんな自分にとってオハコど真ん中の演目を新国オペラでやってくれるという。ひさしぶりに新国立劇場に行きたかった自分、オペラを観たかった自分。ジャスト・タイミングでした。
                        
東京・初台は音楽の街ですね。東京オペラシティコンサートホールと新国立劇場が併存しています。
                                     
新国立劇場、超久しぶり!
                                   
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公演の詳細レポートはまた別途別に立てます。いま忙しいので、あとでゆっくり論評したいと思ってます。まずは速報という形で。
                           
                      
「トリスタン和音の官能的な響き」
                    
トリスタンとイゾルデの全体の骨格となっている「トリスタン和音」。
                           
なんと!官能的な旋律なんだろう!
ものすごい悩ましい、人を一瞬にして虜にする独特の音階進行。
麻薬みたいな感じですね。
                      
第一幕の前奏曲やラストのイゾルデの愛の死で、そのトリスタン和音は最高潮に達する。
                               
むかし音楽評論家の先生の投稿で、なぜトリスタン和音が人を惹きつけるのか?という論文を拝読したことがある。和声学の理論からしても、じつはこのトリスタン和音の音階進行は官能的な響きになる理屈がちゃんと成り立っているのだそうだ。その音階進行の仕組みが、人間の感性に対してすごく悩ましい、独特の色気を感じさせ、官能的に響くように感じてしまう。それが理論的に和声学的に証明されているのだそうだ。
                         
正直その論文の内容は、あまりに専門的過ぎて難しくてわからなかったのだが(笑)、あのトリスタンとイゾルデ全編を通して流れるちょっと普通ではない半音階ずれた感じで進んでいく、通常の調性音楽と違って一種独特の不安定な旋律の運びは、人間の感情を煽り立てるような、まさにその麻薬ぶり、官能的な響きとなる仕掛けがそこに存在しているのだ。
                                    
トリスタンとイゾルデを観劇するのは2016年以来だから、8年ぶりだ。
いやぁ~じつにエロイ音楽だ。(笑)まさに官能的という言葉がぴったりだ。
                                      
ひさしぶりに聴いて、麻薬みたいな音楽だな、と思ってしまった。
                                      
ひさしぶりに観て、もうひとつ思い出したのが、このオペラ、動きがすごく少ないというか、歌手が静止して延々と歌っている感じで、動きがまったくない。そしてすごく冗長的なオペラなんですよね。すごい冗長的。
                                           
ワーグナーの楽劇は、示導動機、ライトモチーフというその楽劇を象徴する主旋律のメロディが楽劇中に何回も登場することで、1本の筋を通すような役割を果たしている。
                                             
このライトモチーフがカッコいんだよね~。
                                      
ワーグナーのオペラがカッコいいのは、このモチーフが、ここぞというところで何回も現れるので、オペラの骨格としての統一感があって、それが余計、すごいドラマティックに感じる、衝撃的なまでの大感動を生む仕組みを作っているのはこれが原因だと思います。このライトモチーフの仕掛けがそう感じさせる要因だと思ってます。
                                                                     
ところがトリスタンとイゾルデは、そのモチーフの再現回数が意外と少ないというか、正確にはその変形的な旋律はよく現れるのだけど、ここぞど真ん中のストライク、聴いていて気持ちいい!というモチーフの登場は意外と少ないような気がする。
                              
だからインターバルが長いんですよ。すごい冗長的な感じなのです。
                                      
キタ~という感じがなかなか来なく、ずっと今か今かと待っているのだけど、じらされている、というかはぐらかされて、最後のイゾルデの愛の死でついにキタ~という感じで昇天してしまう。そういうオペラだということを思い出しました。(笑)すっかり忘れていました。
                                    
つねに半音階進行的な感じで、従来の調性音楽に対する挑戦みたいな感じです。
これもトリスタン和音の成せる業なのかもしれませんね。
                                    
もちろんこれは門外漢の一般聴衆の自分の感覚でモノを言っているので、音楽学的に正しくないかもしれませんが、自分は昔からこのオペラを観劇すると、いつもそう感じてしまいます。すごいインターバルが長くて冗長的なんですよ。(笑)素人感想でスミマセン。。笑笑
                                    
舞台装置は、13年前とは思えないくらい斬新で芸術的だと思いました。
素晴らしいです。
                                    
歌手はタイトルロールの2人が直前で交代したのですね。今日知りました。トリスタン役はいい歌手だと思いました。明るい軽い声質で、ヘンデルテノール、ワーグナー歌手という感じではなく、もっと軽い感じです。でも声量もあり、歌もうまいと思いました。
                                        
イゾルデ役もいい歌手だと思いました。ずっと第一幕から聴いていていい歌手だな~と思っていましたが、ちょっとだけ辛口でいいですか?(笑)この楽劇の最高潮で昇天するところであるラストのイゾルデの愛の死。いただけなかったな~。(笑)ブレスが多くて、滑らかじゃない。あの官能的な旋律を滑らかに一気に歌いきらないと、聴衆は酔えないんですよ。ブツブツ切なので興奮できない。冗長的なオペラなので、いまかいまかとずっと待っていて、そうしてようやくキタ~という感じで待っていた愛の死でしたが、酔えなく、陶酔できなく、もうがっかりでした。一気に冷めてしまいました。
                                         
でも急なピンチヒッターだった訳ですし、プロフィールをよく拝見しておりませんが、イゾルデはそんなに歌っていないのかもしれません。
                                          
自分が今回のオペラで一番楽しみにしていたのは藤村実穂子さん。藤村さんの歌を聴くのもめちゃくちゃ久しぶりです。覚えていないくらい大昔です。陰影感のあるダークなそして深みのある音色の歌声に、あ~これはまさしく藤村さんの声ということで嬉しかったです。藤村さんの演じたブランゲーネは、非常に歌う出番が多いので、すごく堪能できました。まさしく我が日本を代表する世界的な歌手という実力ぶりでした。
                      
大野和士指揮東京都交響楽団も最高です。
                                        
やっぱりホールでの実演は、器感のダイナミックレンジと低域の出方が全然違う。あのオーケストラの身体を揺らすような豊かな分厚い低音は、家庭のオーディオルームでは再現不可能だと毎回思います。低域の信号は波長が長いので、再生空間の容積が大きいほどいいですね。ホールのあの巨大空間での低域再生は、オーディオルームでは再現は難しいと思います。
                                       
この後、上野の東京・春・音楽祭でもヤノフスキ&N響でトリスタンとイゾルデの演奏会形式を体験します。ヤノフスキの高速でハードボイルドなワーグナー、とても楽しみにしています。きっとまた大感動に違いない。やっぱりワーグナーってハードボイルドに演奏してほしいですよね。枯れたワーグナーはダメです。(笑)
                                   
ひさしぶりに観た新国オペラ「トリスタンとイゾルデ」の公演論評は、別に立てます。落ち着きましたら、ですが。。。
                            
ひさしぶりの新国立劇場。
                                    
電子マネーやクレジットカードが使えるようになりました。(笑)
いいぞ!いいぞ!コンサートホールやオペラハウスもDX化が必要ですね。
                                        
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新国の定番のオペラ演目に合わせた(?)スィーツ。いつも食べたいと思ってしまいます。
                                      
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夕方4時に開演。終演が夜の9時半。5時間半の大伽藍。相変わらずキツかったです。(笑)
                                     
                 
(c)新国立劇場 Facebook
                           
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