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シューマン室内楽マラソンコンサート [国内クラシックコンサートレビュー]

とにかく2024年辰年。年男の自分であるが、まさに人生最大の試練の年。公私ともにすごい大変なストレスにさらされている。とくに3月に入ってプライベート面でどん底で、それでも予定していたクラシックのコンサートは行くので、もう精神状態が下げたり、上げたりでまさしくジェットコースターのようで気分が悪くなる。(笑)


そういう状態なので、コンサートレビューの日記がなかなか書けなくて申し訳なかったのだが、徐々に書いていきたいと思う。


諏訪内晶子さんの国際音楽祭NIPPON2024。シューマン室内楽マラソンコンサートに行ってきた。


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まさにシューマンの室内楽を、朝11:00開演で、20時頃終演になるまで、まさに1日フルマラソンのコンサートである。シューマンの室内楽を、ピアノ三重奏曲、ヴァイオリン・ソナタ、弦楽四重奏曲、そしてピアノ四重奏曲、ピアノ五重奏曲とおおよそ、すべての作品をフルに聴くという機会はなかなかないのではないだろうか。


大変貴重な経験をさせていただいたと感謝している。


この日の演奏会の目玉は、なんといってもやはり若手演奏家中心であること。これがなんと言っても新鮮だ。諏訪内さんは最後の大トリのピアノ五重奏曲だけの出演だった。


やはり若手の演奏家、これからの日本のクラシック音楽界を継いでいくその俊英たち。なんともフレッシュな顔ぶれで、聴いていても見通しの明るさ、可能性を感じて、その場がふっと明るくなる感じがする。演奏家のルックスを見てもあどけさなが残って可愛い感じがするし、自分の気持ちもとても若返った気持ちがする。なんか自分の子供の晴れ舞台の演奏会を親として観ている感じだ。(笑)


そしてなんといっても、技術的にハイレベルであること。自分が普段聴いている自分の世代の演奏家とまったく遜色ない、素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれたこと。日本のクラシック界の将来は明るいな、と安心しました。


とくに一度聴いてみたいとずっと思っていた若手音楽家が何人も登場していて、この機会を逃しては絶対いけないな、と狙っていた。



国際音楽祭NIPPON2024のシューマンづくしの企画としては、このように東京オペラシティコンサートホールのホワイエで、ロビーコンサートと題して、シューマンの室内楽について、ちょっとしたレクチャーコンサートも催されていた。司会進行は、音楽評論家の舩木篤也さんが務められていた。


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そして国際音楽祭NIPPONは、単なるコンサートだけではない。若手音楽家の育成も大きなテーマだ。諏訪内晶子さんなどの講師陣を迎えマスタークラスも開催された。写真は、ヴァイオリン部門。講師は諏訪内晶子、ベンジャミン・シュミット。



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(c) 国際音楽祭NIPPON Twitter/X



シューマンの室内楽というのは、じつはあまり自分は実演で経験したことがなく、ブラームスの室内楽のほうはもうベテランだ。(笑)東京春祭の川本嘉子さんのプロジェクトでもう10年以上聴き続けている。ブラームスの場合は、いかにもきっちりとした骨格感があって厳格な旋律で、ドイツ音楽らしい男らしいメロディで、硬派な音の紡ぎの中でその合間にフッと現れる美しい旋律がなんとも効果的。そういう男らしい硬派~美しいのバランスが絶妙に交互に現れるので、そこはかとなく秋の季節が似合うそういう哀愁帯びた音楽。


ブラームスの音楽って大体そんな感じではないだろうか。


でもシューマンの音楽は、とても優しい女性的な美しいメロディでほんとうに癒される。音階の進み方やメロディの構造がとてもわかりやすく、とても親しみやすい、わかりやすい音楽だ。すごく優しくて女性的で叙情的な調べ。聴いていて浄化される、というか、精神が綺麗になるようなそんな爽やかな感じがする。


シューマンの音楽は、春の季節が似合うと思う。ブラームスが秋の哀愁とすると、シューマンは春の訪れである。


クラシック初心者の方にも入りやすい作曲家ではなかろうか。


アルゲリッチが、やはり私はいちばんシューマンが好き。シューマンがいちばん自分に合っている、と告白しているくらいだ。アルゲリッチが愛したのはピアノ曲と室内楽だ。アルゲリッチとシューマンといえば、子供の情景とかクライスレリアーナ。あとシューマンのピアノ協奏曲があるじゃないですか!もうピアノコンチェルトの中でも名曲中の名曲ですね。ほんとうに明るいいい曲です。


ブラームスの成功はやはりシューマン夫妻なくしてはありえなかった。そしてその後のブラームスの人生、創作活動についても、シューマンの妻・クララとの関係を抜きにして語ることはできない。



でもこの3者でその音楽性がとても明確に違いがあってとても興味深く感じるところでもある。


自分は、シューマンの室内楽が大好きだ。


心温まる旋律で、どちらかというと春の訪れというイメージがあり、春の季節にぴったりな素敵な調べだと思う。でもその一方でシューマンの音楽は、明るいだけじゃない。ほの暗くロマンティックなところも特徴で、シューマン自身が精神障害を患い始めてからは一層内向的になり、心の奥底へ沈み込んでゆくようになる。情熱的な曲ですら、何か焦燥感にかられるようであり、心の不安定さが拭いきれない、という一面も持っている。けれども、ファンにとってはそれが魅力であり、強く惹かれるのではないか。


シューマンの時代。すなわち19世紀の前半。室内楽は、作曲家が「本気で」取り組むべきジャンルとなっていた。もはや王侯貴族の館やアマチュア家庭でのみ奏でられる娯楽作品ではない。公衆が集まるコンサートで、書き手の能力がシビアに問われ、交響曲と同様のステイタスを有していたとみなされていたのだそうだ。


それまでに公表したのは、もっぱらピアノ曲と歌曲だった。1841年に交響曲を、翌1842年に室内楽曲を集中的に書いている。私人としても公人としても「社会的承認」を得ねば、というわけだ。室内楽に関しては、以後ドレスデン時代とデッュセルフ時代にも書き継いでいる。


今回、そんなシューマンの室内楽をもうほとんどすべてを網羅するという感じで聴かせていただいて、自分はシューマンが紡ぎ出すそのメロディへの自分の印象、認識を新たに確実にした、という感じだった。



Following pictures are under the copyright of 国際音楽祭NIPPON Twitter/X


●<第1部>11:00開演

ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 Op. 63(葵トリオ)


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ピアノ三重奏曲 第2番 ヘ長調 Op. 80 (辻/佐藤/阪田)


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ピアノ三重奏曲 第3番 ト短調 Op. 110 (シュミット/マインツ/福間)


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ピアノ三重奏曲というのは、ヴァイオリン、チェロ、ピアノの室内楽だ。



妻クララへの誕生日プレゼントのために作曲された第1番。メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番ニ短調に影響を受けて作曲され、この2つの作品はロマン派を代表するピアノ三重奏として広く認知されている。第2番は、1847年に第1番と同時期に作曲された。次第にシューマンを苦しめる心の病から逃れるかのように、明るく前向きな内容で、シューマン自身「甘やかで生き生きとした印象」としており、後にクララはこの作品について「私の魂の深いところをあたたかく包み、最初から最後まで私を喜ばせる作品」であり「大好きで何度も演奏したい」と述べた。そして第3番は、シューマン家でクララのピアノで初演されたのち、1852年に公開初演された。クララ自身、この作品を情熱的で創意に満ちていると非常に気に入っていたようすの日記が遺されている。


シューマンの室内楽はあまり経験がないと思っていたのだけど、調べてみると、シューマンのピアノ三重奏曲は、2011年にベルリンのコンツェルトハウス・ベルリンの室内楽ホールで生体験した経験があり、素晴らしい感動体験だった。素敵なホールでした。シューマン室内楽と言えば、ピアノ五重奏曲やピアノ四重奏曲が双壁だと思うが、ピアノ三重奏曲もじつに素晴らしいのだ。


ピアノ五重奏曲とピアノ四重奏曲は名曲なので、比較的コンサートやFM放送などでも取り上げられる機会も多いが、それに比べてピアノ三重奏曲、あまり耳にする機会は多くない。そういった意味ではある意味渋い選曲かもしれない。


自分がかねてより聴きたかったのは、葵トリオだ。小川響子(ヴァイオリン)、伊東裕(チェロ)、秋元孝介(ピアノ)のトリオ。


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ドイツのミュンヘン国際音楽コンクールで2018年に堂々の1位を獲得し、ドイツを拠点に活動する。ベルリン、ミュンヘンなどで研磨をしているときから注目していて、ぜひ一度実演に接してみたいと思っていてようやく念願が叶った。フレッシュなアンサンブルで、切れ味鋭い鋭敏さとハーモニーの美しさが両立しているような抜群のコンビネーションを魅せてくれた。ベテラン並みのかなりハイレベルなアンサンブルで舌を巻いた。特に小川響子のヴァイオリンが目立っていた。


辻彩奈(ヴァイオリン)、佐藤晴馬(チェロ)、阪田知樹(ピアノ)の第2番。辻、阪田は実演の経験済みで、佐藤晴馬が初体験で注目。チェロというもっとも人間の聴覚に恍惚感を与える帯域の楽器。ボーイングがサマになっていて、格好良かった。1度拝見してみたかった。


シュミット(ヴァイオリン)、マインツ(チェロ)、福間洸太朗(ピアノ)の第3番。自分はもちろん福間を初体験で狙っていた。予想外にシュミット、マインツの押しが目立ち、いい奏者だな、と感心した。とくにこのあとのヴァイオリン・ソナタでも活躍するシュミットが素晴らしく、自分はヴァイオリニストはやっぱり女性奏者がいい、というところもあるのだが、男性ならではの切れ味、パワフル、弓が弦に吸いつくような安定したボーウイングなど、さすが男性奏者だなと舌を巻いた。



●<第2部>14:00開演


ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ短調 Op. 105(中野/秋元)


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ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調 Op. 121 (シュミット/福間)


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ヴァイオリン・ソナタ 第3番 イ短調 WoO 27 (辻/阪田)


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シューマンの第1番のヴァイオリン・ソナタは1851年に着手され、たった16日間で完成されたという曲。まだまだ活動的で、情熱に溢れる時期の作品であり、全体的に緊密に書かれた名作なのだが、シューマンはこの曲に満足していなかったようで、第1番の完成後、約1か月ほどですぐに第2番に着手、たった1週間で完成させるという超人的能力を発揮。第1番よりも更に円熟の作品を作り上げたのであった。第3番のソナタはほとんど知られていない作品で、これはかのヨアヒムに献呈された「F.A.E.ソナタ」のシューマンが作曲した部分(第2楽章と第4楽章)に、新たに2つの楽章を加えてソナタとして完成させたもの。完成度は高いものの、ほとんど注目もされず、没後100年目の1956年になってようやく楽譜が出版されたという秘曲である。



中野りな(ヴァイオリン)、秋元孝介(ピアノ)の第1番。中野りなもぜひ聴いてみたい、実演に接してみたかった若手ヴァイオリニストで、可愛らしい優しいルックスに似つかないパワフルなテクニシャンで驚いてしまった。(笑)将来かなり有望であろう。


シュミット(ヴァイオリン)、福間洸太朗(ピアノ)の第2番。かねてより福間洸太朗のピアノを聴いてみたいと思っていた。やっぱりいま若手男性ピアニストは熱いし、超人気だ。ルックスの良さ、スタイルの良さ、そして堅実だけど光るものがあるテクニック。人気なのはよくわかるな~と納得だった。


辻彩奈(ヴァイオリン)、阪田知樹(ピアノ)の第3番。辻、阪田のコンビは、もう普段でも数多くの公演を重ねてきており、もうお互いあ・うんの呼吸というか、よくお互いを知っている絶妙のパートナーであろう。もうすっかり名コンビだ。辻彩奈は、自分にとっては、スイスロマンド100周年記念コンサートで東京芸術劇場で、ジョナサン・ノット指揮でメンデルスゾーンのコンチェルトにて初めて実演に接した。将来有望と目をかけているヴァイオリニストである。いまもっとも公演数が多く、弾けている旬な奏者ではないか。初めて実演に接したときと比べ、より音量が大きく、奏法もすごく安定してサマになってきた、というか貫禄が出てきた。一流ヴァイオリニストの仲間入りという感じだ。経験の数がモノを言ってますね。


阪田は相変わらず素晴らしい。ラフマニノフ全曲演奏会でその実力に舌を巻き、ピアニストとしての実力はそのときに詳細にレポートした。まさにその通りだ。若手男性ピアニスト・知性派ピアニストの筆頭株としてこれからもどんどん精進していってほしい。応援している。



●<第3部>16:00開演


弦楽四重奏曲 第1番 イ短調 Op. 41-1 (米元/小川/鈴木/伊東)


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弦楽四重奏曲 第2番 ヘ長調 Op. 41-2 (中野/米元/佐々木/佐藤)


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弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 Op. 41-3 (カルテッド・アマービレ)


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”弦楽四重奏は、クラシックの基本である。”


小澤征爾さんが解脱して得た真実である。それをもとに小澤国際室内楽アカデミー奥志賀、そしてスイス国際音楽アカデミー、とこの真理をもとに若手を育成してきた。


「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」と同時に、奥志賀で若い音楽家を集めて講習会をやっていて、それとまったく同じアイデアをスイスに持ってきた。日本では日本人が主で、スイスではヨーロッパ人が中心だ。


小澤さんの解脱した真実とはこういうことだ。


要するに四重奏をやってソリストになるのと、やらずになるのとでは( その人が作り出す )音楽に違いが必ずあるということですね。音楽の本当の芯を作るのは、弦楽四重奏の主なる特徴なんですね。弦楽四重奏というのは、飾りがないんですよね、全然。オーケストラというのは飾りが割りと入っているけど。


飾りがまったくなくて、純粋な音楽作りを4人でやるというのが、歴史的にも弦楽四重奏の特徴で、作曲家もみんなそういうつもりで書いているからね。そこには純粋な音楽だけがあるのです。


そういう経験があったほうが、オールラウンドで、全体としていい音楽家になれると思います。「音楽作り」には四重奏が大切だと信じています。細かく言えば、音楽の語法とか、論法とか、そういうものを習うのにも四重奏はすごくいい。


音をただ並べるだけでは音楽にならないわけで、どうやって作曲家が紙に書いたものを音楽に戻すかと、ここのことですよね。もちろんソロの曲でもそういうことはあるのですが、四重奏の場合はそれがもろに出てくるということです。




シューマンが作曲した弦楽四重奏曲は、この作品41の3曲のみである。


1840年に結婚した妻クララが、1842年に結婚後初めての長い演奏旅行に出ている間、シューマンはライプツィヒの自宅で一人暮らしを余儀なくされ、極度のスランプに陥っていた。1840年の歌曲 (「歌曲の年」)、1841年の交響曲 (「交響曲の年」)に続き、新たに室内楽に目を向け、1842年6月4日に第1番の作曲を開始し、約2か月の間に3曲の弦楽四重奏曲を完成した。これらは、シューマンにとって最初の室内楽曲作品である。


シューマンの弦楽四重奏は、シューマンが重んじた先人たちの様式とロマン派の表現が高い次元で融合した作品ともいえる。


これは第1番だったか、第2番だったか覚えていないのだけど、たぶん1番。もうものすごい美しい軽やかなメロディで、まさにシューマンらしい春の訪れを感じさせるような明るくて優しい曲。自分はもう一発で虜になりましたねぇ~。この日のフルマラソンコンサートの中で1番驚いて、1番シューマンの音楽って素敵だ!と思った瞬間です。弦楽四重奏だから、弦の合奏の美しさ、ハーモニーの美しさが、この曲に際立って合っていて、もうじつに軽やかに軽快に弾くんだよね~。弦の厚いハーモニーってほんとうに美しいです。


ホールに響き渡る倍音の美しさ。


ふっと自分の頬に春のそよ風があたる・・・、みたいななんとも言えない軽やかさ。もう自分はベタ惚れ。自分がこの日一番反応したときでした。


米元響子さんは、ずいぶんご無沙汰。数年前にイザイの無伴奏のリサイタル以来。あとは前回の諏訪内さんの音楽祭以来かな。なんか、より女性らしく美しくなったんじゃないでしょうか?(笑)なんかあか抜けて綺麗になったな、と思いました。


カルテッド・アマービレは、2015年桐朋学園大学在籍中のメンバー(Vn. 篠原悠那、北田千尋、Va.中恵菜、Vc.笹沼樹)により結成された。勉強不足で存じ上げなく申し訳なかったですが、素晴らしかったですね~。なんかふつうに自分が聴いているベテランのカルテッドと全然遜色ないんだよね。もう驚いちゃいます。自分が差を認識できないアマチュアというだけなのか、それともほんとうに上手いのか。たぶん間違いなく後者です。自分はそれなりに経験を積んできたという自負があるので、そこら辺の識別には自信があります。


ほんとうにすごいよ。驚くばかりであった。




●<第4部>19:00開演


幻想小曲集 イ短調 Op. 88 (葵トリオ)


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ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op. 47 (シュミット/鈴木/マインツ/阪田)


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ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op. 44 (諏訪内/米元/佐々木/マインツ/ガヤルド)


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やっぱりシューマンの室内楽の名曲、王様と言ったら、ピアノ四重奏曲、ピアノ五重奏曲であろう。もう名曲中の名曲で、室内楽コンサートではかならずお目にかかることの多い曲だ。


とくにピアノ五重奏曲はその頂点に立つと言ってもいい珠玉の名曲、秀逸な作品で、とくに最終楽章のあの盛り上がりのところは、まさに春の訪れである。もうシューマンと言ったら結局ここなんだよね~。(笑)


シューマンのピアノ五重奏曲と言ったら自分は想い出がある。東京オペラシティコンサートホールのリサイタルホールのほうで、ゴローさん存命のとき、ゴローさん、みつばちさん、そして島田真千子さん、などのメンバーで、このシューマンのピアノ五重奏曲の演奏会を披露したことがあり、ゴローさんがmixiの日記でぜひ応援に来てくれ~、というお誘いに、自分はかけつけたのであった。


懐かしすぎる~。(笑)何年前のことだ?少なくとも2012年より前のことだから、12年以上前のことだ。

ヴァイオリンは1stが島田さんで、2ndがゴローさんだった。ピアノがみつばちさん。


これから開演、いざ始まる、というときに、ゴローさんがふっと立ち上がり、この期に及んで椅子の高さを調整していた。もっと始まる前にやっておけよ(笑)、と思ったものだ。図太い神経だな、ゴローさんらしいとも思いました。


それはそれは素晴らしい演奏で、”シューマンの曲は春の訪れ”というのは、そのときにこの曲を聴いて、自分の中に深く刻み込まれたフレーズだった。シューマンのピアノ五重奏曲が室内楽の名曲中の名曲である、ということも、このときにしっかり自分の中に刻み込んだ。あの公演は忘れられないです。


シューマンのピアノ五重奏曲と言ったら、あのコンサートのことを思い出すし、自分の中ではあの公演がナンバーワンの位置づけです。


個人にとってのメモリアルなコンサートの想い出というのは、じつはプロの演奏でない場合が意外と多いんですよね。


幻想小曲集と言ったら、もともとピアノ曲集で、ふつうシューマンのアルバムでは、子供の情景とカップリングで、この幻想小曲集が入っているアルバムが多いですね。これを葵トリオで聴く。素晴らしかった。なんか懐かしい感じがした。自分が一生懸命クラシックを勉強していたときのことを思い出すというか。。。


ピアノ四重奏曲もスタンダードな名曲。もちろん素晴らしい演奏だった。


そして最後の大トリ。ピアノ五重奏曲。諏訪内晶子さんが満を持してついに登場。

朝11:00からずっと聴いてきたシューマンの室内楽コンサート。もう夜の20時近くだったかな。なんか最後の大見せ場にふさわしいゴージャスなアンサンブルで自分はついに来たか~という涙がうっすらと・・・。もちろんこのとき自分のメモリアルのあの公演のこともオーバーラップした。最終楽章のあの盛り上がる、昇天して行ってエンディングに入る、あの感動の進行は相変わらず痺れました。


1日かけてのフルマラソンコンサートにふさわしいエンディングだったと思います。


最後は、芸術監督の諏訪内さんが、御礼のご挨拶とアンコール、クララ・シューマン 3つのロマンス Op.21より第1楽章で締めたのでした。



若手の演奏家のみなさんは、その実力の期待値通りの抜群のアンサンブルの精緻さと色艶のある表現力で、シューマンの味わい濃いテイストを十分に醸し出していたと思います。やはり室内楽って、聴いている聴衆からすると、各楽器のこまやかなフレージングやニュアンスが手にとるようにわかるもんなんですよね。そういうすごい生々しさがじかに感じ取れるのです。


突っ走らないし、ちょっと呼吸する、ちょっとフレーズを歌う、ちょっと息を抜くといったところがシューマンの曲のやんわりとした幻想的な感覚に妙にマッチしていてお見事としか言いようがなかったと思います。


音程の安定感と音の柔らかい伸びが素晴らしく、繊細な心の動きやふるえが感じられる表現はみんな若いのにベテラン並みだと感服しました。


室内楽の素敵なところは、音数の少ないことに起因する、そのほぐれ感、ばらけ感、隙間のある音空間を感じることで、音が立体的でふくよかに感じ取れる感覚になれるところだと思います。


大編成のオケの重厚な音では絶対味わえない豊潤なひとときだ。


そんな素敵な「音のさま」がこの音響の素晴らしい東京オペラシティコンサートホールに響きわたるのを聴けたのは本当に最高の幸せ。


これから未来の日本のクラシック界を背負って立つべく、経験、大舞台をどんどんキャリアを積んでいって大きくなっていってください。


私も最初は優しく包容あるように論評しましたが、これからは厳しいです。(笑)

やっぱり演奏家にとって、音楽評論は優しいだけではダメだと思います。お互い両者にとって伸びていく、学んでいく、育っていくには、お互い前向きで真実に迫る厳しいアドバイスも必要だと思います。


今日体験した若手演奏家のみなさんは、きっとこれからの大スターとなるそういうオーラがありました。

すごく楽しみにしています。


最後にシューマンの室内楽というと、もうひとつ自分には思い出があります。

こうしてみると、自分は意外やシューマンの室内楽、実演の経験多かったです。


ゴローさんご逝去の2012年。その年の年末をどう過ごそうか。第九はマンネリだしな~と思っていたところに、堀米ゆず子さんのシューマンの室内楽コンサートが、東京文化会館 小ホールであったのです。2012年12月21日でした。年末の聴き納めはこれにしよう!と即決でした。


プラチナ・ソワレ第3夜「冬の一夜、シューマンとともに」というタイトルで、



ヴァイオリン:堀米ゆず子

チェロ:山崎伸子

ピアノ:津田裕也


曲目


シューマン/アダージョとアレグロ 変イ長調 Op.70

シューマン/子供の情景 Op.15

シューマン/ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調 Op.121


~休憩~


シューマン/ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 Op.63



でシューマンの室内楽を楽しんだのでした。



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堀米さん、若い!!!(笑) 


いまでもよく覚えていますよ。


堀米ゆず子さんとゴローさんとは親交があって、ゴローさんのNHKのクラシック番組にもよく出演してもらっていた間柄でした。


そしてこのコンサートが終わった後、堀米さんはMCで、この年亡くなった小林悟朗さんのことに言及して、


「今年、私の大切な友人だったNHKの音楽ディレクター、小林悟朗さんが亡くなられました。つい先だって、「ヴァイオリン戻ってきてホントに良かったねぇ~。」とかいろいろ話していたばかり、いまだに信じられません。今日はその悟朗さんが大好きだったシューマンのピアノ四重奏曲の第3楽章をアンコールに演奏したいと思います。今日はトリオでしたが、このアンコールのためにヴィオラをわざわざ呼んできました。(笑)どうぞお楽しみください。」




そう言えば、堀米ゆず子さん、昔、空港の税関で自分のヴァイオリン、ガルネリを没収されてしまった事件ありましたね。(笑)いま昔の日記を読み返して思い出しました。そんなことあったな~という感じです。


シューマンの室内楽というのは、じつは自分にとって、コンツェルトハウス ベルリン、ピアノ五重奏曲、そして堀米さんコンサートと意外に縁が深かったということをいまこの日記を書きながらわかりました。


きっと、この国際音楽祭NIPPON2024 シューマン室内楽マラソンコンサートも、音楽の神様が自然と赤い糸で結び付けてくれて、当の本人である自分はすっかりそのことを忘れて、よっしゃ~若手を聴きに行くか~というなにげない動機で4部ともフル参加した、という偶然だったのかもしれません。


自分の時代から、若い新しい時代へ。

そういう縁結びだったのかもしれません。


音楽の神様に感謝です。


音楽の神様はいつも自分の音楽人生のことを見守ってくれています。











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